ミネラル(無機質)とは何?必要とされる理由と摂取方法
2021/11/17
ミネラルは五大栄養素の一つ
ミネラルとは、体を構成する「酸素、炭素、水素、窒素」の主要4元素以外のものの総称です。また、体の機能の維持・調節に必要な「五大栄養素」の一つでもあります。
ミネラルは「無機質」とも呼ばれます。
必須ミネラルとは?
ミネラルのうち、人の体に不可欠なものを「必須ミネラル」とよびます。
必須ミネラルは16種類
必須ミネラルは以下の16種類です。
ナトリウム
マグネシウム
リン
硫黄
塩素
カリウム
カルシウム
クロム
マンガン
鉄
コバルト
銅
亜鉛
セレン
モリブデン
ヨウ素
なぜ必要?ミネラルが不足すると起こる不調とは
ミネラルは健康維持に必要不可欠であるといわれます。では、ミネラルが不足するとどんな不調が起こるのでしょうか。
たとえば鉄が不足すると、酸素の供給が不十分な状態になって、頭痛や食欲不振などの症状を引き起こすことがあります。またカルシウム不足は骨の形成に影響を及ぼすことがあります。
他にもマグネシウム不足は気分の落ち込みなどを、カリウム不足は脱力感などを招くことがあります。
反対に過剰摂取に注意すべきミネラルも
とはいえ、やみくもに多く摂取すれば良いというわけではありません。過剰摂取に注意すべきミネラルもあります。
たとえばナトリウムは身近な食べ物に多く含まれますが、摂りすぎは血圧上昇などを招き、さまざまな病気のリスクを高めます。またサプリメントなどによって亜鉛を摂りすぎると吐き気や食欲不振などにつながることがあります。
鉄に関しても、食事からの過剰摂取の心配はほとんどないものの、サプリメントなどによる摂りすぎは吐き気や腹痛、便秘といった体調不良だけでなく、臓器などへの影響を引き起こしかねません。
それぞれのミネラルの役割と摂取方法
次からは、それぞれのミネラルの詳しい役割や、含有量が多い食材について解説します。
ナトリウム
・ナトリウムの役割
ナトリウムは、カリウムとともに体内の水分バランスを調整したり、細胞外液の浸透圧を維持したりといった働きを担います。筋肉の収縮、神経の情報伝達にも関係しています。
ナトリウムを摂りすぎるとリンパ液や血液中の水分量が増え、むくみや血圧の上昇を招きます。過剰摂取は体調不良を招くことがあるので注意しましょう。
・ナトリウムの摂取量の目安
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日のナトリウムの目標量は(食塩相当量として)18歳以上の男性で7.5g未満、女性で6.5g未満としています。
・ナトリウムを多く含む食材

ナトリウムは主に食塩として摂取されています。身近な食材では、しょうゆ、みそなどの調味料、即席めん、ハムなどの加工食品、梅干しなどの漬物などに多く含まれます。
マグネシウム
・マグネシウムの役割
タンパク質合成、筋肉や神経の機能、体温・血圧調整など、さまざまな生化学反応にかかわる酵素をサポートします。
血液循環の維持や神経情報の伝達もマグネシウムが関わっています。
ところで、体内には筋肉の伸び縮みをつかさどるセンサーがあり、カルシウムとカリウム、マグネシウムが深く関与しています。マグネシウムが不足するとバランスが崩れ、このセンサーがうまく働かなくなります。
またマグネシウム不足は、骨の形成、神経過敏、抑うつ感を招くことがあります。
健康な人の場合、余分なマグネシウムは腎臓で排出されるので、通常の食事で過剰摂取の心配はありません。
しかしサプリメントやにがりなどでマグネシウムを過剰に摂ると、下痢を起こす可能性があります。
・マグネシウムの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のマグネシウムの推奨量は30~64歳の男性で370mg、女性で290mgとなっています。
日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で255mg。やや不足気味です。
・マグネシウムを多く含む食材

マグネシウムは、身近な食材ではあおさ、あおのり、わかめなどの藻類、干しえび、しらす、あさりなどの魚介類、きな粉、油揚げなどの豆類などに多く含まれます。
リン
・リンの役割
リンは、細胞膜や核酸の構成要素として細胞に存在します。カルシウムに次いで多く、成人の体重の約1%を占めるミネラルです。
骨や歯の発達に不可欠な成分です。また神経や筋肉の機能を正常に保つ役割も担います。
リンはインスタント食品や加工食品に多く含まれ、過剰に摂りすぎてしまいがちです。
長期に渡る過剰摂取は腎臓機能やホルモン分泌に影響を及ぼすほか、カルシウムの吸収を妨げることもあります。
・リンの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のリンの目安量は18歳以上の男性で1000mg、女性で800mgとなっています。
また耐容上限量は、18歳以上の男女ともに3000mgです。
・リンを多く含む食材

リンは、身近な食材ではかたくちいわし(田作り)、干しえびなどの魚介類、卵、ナチュラルチーズやプロセスチーズなどの乳製品に多く含まれています。
イオウ
・イオウの役割
髪の毛や皮膚、爪などのタンパク質を合成します。
・イオウを多く含む食材

イオウは牛肉、羊肉、牛乳、小麦粉、タマネギなどに多く含まれています。
塩素
・塩素の役割
胃酸に多く含まれていて、体液の浸透圧維持や消化をサポートします。
もし過剰に摂取しても通常は汗や尿で体外に排出されるため、心配はないとされています。また不足すると胃液の酸度が低下して、消化不良や食欲低下を引き起こします。ただ、普通の食生活を送っていれば塩素が不足することはほぼありません。
・塩素を多く含む食材

食塩として摂取されることがほとんどです。
カリウム
・カリウムの役割
体液の浸透圧を調節して一定に保ちます。ナトリウムの排出を促す作用があり、塩分の摂りすぎを調節するのに役立ちます。
多量の汗をかくとカリウムも水分と一緒に排出され、浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすことがあります。
通常の食事でカリウムが欠乏することはありません。しかし嘔吐や下痢などでカリウム不足になると、浸透圧調整機能の不調のほか、食欲不振、だるさなどを起こすケースがあります。
・カリウムの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のカリウムの目安量は18歳以上の男性で2,500mg、女性で2,000mgとなっています。
また目標量は、18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です。
日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で2,350mgとなっており、不足傾向です。
・カリウムを多く含む食材

カリウムを多く含む身近な食材は、刻み昆布、ほしひじきなどの藻類、あんず(乾)、いちじく(乾)などのドライフルーツ、さつまいも(干しいも)、里芋などの芋類、蒸し大豆、納豆などの豆類などがあります。
カルシウム
・カルシウムの役割
各種ミネラルの中でも、体に最も多く存在するミネラルです。骨や歯を構成する成分になるほか、一部は血液や筋肉、神経の中で出血を予防したり、筋肉の興奮を抑えたりする働きもあります。
・カルシウムの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のカルシウムの推奨量は30~74歳の男性で750mg、女性で650mgとなっています。
日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で498mgとなっていて、かなり不足傾向です。
カルシウムが不足すると骨が十分に成長せず、骨がもろくなる原因になります。特に閉経後の女性では骨粗鬆症になりやすくなります。
通常の食生活でカルシウム過剰になる心配はほとんどありませんが、過剰摂取は亜鉛や鉄など、他のミネラルの吸収を抑制することもあります。サプリメントや医薬品からの多量摂取には気をつけましょう。
・カルシウムを多く含む食材

カルシウムを多く含む身近な食材は、干しえび、かたくちいわし(田作り)などの魚介類、ひじきなどの藻類、ナチュラルチーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品、ごまやアーモンドなどの種実類などがあります。
カルシウムは、ビタミンDとともに摂取することで吸収効率が高まります。
クロム
・クロムの役割
糖質や脂質の代謝を助け、インスリンの働きを活性化します。血中コレステロール値を下げる、中性脂肪を正常に保つ役割も担います。
・クロムの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のクロムの目安量は18歳以上の男女ともに10µgとされています。
・クロムを多く含む食材

クロムを多く含む身近な食材には、あおさ、バジル(粉)、粉寒天、あおのり、パセリ(乾)、刻み昆布などがあります。
マンガン
・マンガンの役割
金属酵素の構成成分です。酵素の活性化を促進します。骨の発達に関わり、糖脂質の代謝や皮膚の代謝などの酵素反応に関係しています。
・マンガンの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のマンガンの目安量は18歳以上の男性で4.0mg、女性で3.5mgとなっています。
・マンガンを多く含む食材

マンガンを多く含む身近な食材には、クローブやシナモンなどの香辛料、あおさ、あおのりなどの藻類、緑茶、紅茶などがあります。
鉄
・鉄の役割
鉄は血液中のヘモグロビンに多く存在し、酸素を運ぶ役割を担っています。身体の成長や細胞機能、筋肉代謝、一部のホルモン合成などに必要です。
鉄が不足すると「鉄欠乏性貧血」を招くおそれがあり、倦怠感、息切れ、集中力低下、食欲不振などを引き起こすことがあります。特に妊婦、経血量が多い女性などは鉄が不足する可能性が高いとされています。
一方、健康な成人では過剰摂取になることはほとんどありません。とはいえ、サプリメントや医薬品などで一度に多量摂取すると便秘や胃のムカつき、腹痛などにつながりかねないので要注意です。
・鉄の摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日の鉄の推奨量は18~64歳の男性で7.5mg、月経のない18~64歳の女性で6.5mg、月経のある18~49歳の女性で10.5mg、月経のある50~64歳の女性で11.0mgとなっています。
また、耐容上限量は、18歳以上の男性で50mg、女性で40㎎です。
日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で7.9mgです。月経のある女性では不足気味といえるでしょう。
・鉄を多く含む食材
鉄分には、肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜などに含まれる非ヘム鉄があります。動物性タンパク質やビタミンCを一緒に摂取することで吸収効率を高めることが可能です。

鉄分を多く含む身近な食材には、あゆ、かたくちいわし(煮干し)などの魚介類、豚レバーや鶏レバーなどの肉類、あおのり、ひじきなどの藻類、パセリ、切り干し大根などの野菜類があります。
コバルト
・コバルトの役割
ビタミンB12の構成成分で、赤血球に含まれるヘモグロビンを生成します。他のミネラルのように単独では働きません。
・コバルトを多く含む食材

コバルトを含む身近な食材としては、レバー、牡蠣などの魚介類などがあります。
銅
・銅の役割
銅は赤血球の形成を促し、体内酵素の正常な働きと骨の形成を助けます。動脈の弾力を保って血栓を予防するなど、免疫力をサポートする働きも担います。
ちなみにタコやイカの血液が青いのは、銅と結合したヘモシアニンというタンパク質が含まれるからです。
・銅の摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日の銅の推奨量は18~74歳の男性で0.9mg、女性で0.7mgとなっています。
・銅を多く含む食材

銅を多く含む身近な食材としては、干しえび、ほたるいか、いいだこなどの魚介類、牛レバー、豚レバーなどの肉類、きな粉などの豆類があります。
亜鉛
・亜鉛の役割
亜鉛は、胎児や乳児の発育に重要な役割を果たしています。また味覚を感じる細胞や、免疫機能、細胞代謝、生殖機能にも関わります。タンパク合成や細胞分裂にも必要です。
亜鉛が不足すると味覚の異常、食欲不振などを誘発します。また男性の性腺機能低下や、目や皮膚の異常などにつながることがあります。
通常の食生活で摂りすぎになる可能性は低いものの、サプリメントなどで亜鉛を摂りすぎると吐き気や下痢などを誘発するおそれがあります。
・亜鉛の摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日の亜鉛の推奨量は18~64歳の男性で11mg、女性で8mgとなっています。
また耐容上限量は、18~29歳の男性で40mg、30~64歳の男性で45mg、18~64歳の女性で35mgです。
・亜鉛を多く含む食材

亜鉛を多く含む身近な食材には、牡蠣、かたくちいわし(田作り)、しらす干し、かつお節、うなぎなどの魚介類、豚レバー、牛肉(赤肉)などの肉類などがあります。
セレン
・セレンの役割
セレンは酵素やタンパク質の一部を構成するミネラルで、体を守る作用を持ちます。毒性が強く、サプリメントなどでの安易な摂取は避けるのが賢明です。
・セレンの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のセレンの目安量は18歳以上の男性で30μg、女性で25μgとなっています。
また耐容上限量は、18~74歳の男性で450μg、女性で350μgです。
・セレンを多く含む食材

セレンを多く含む身近な食材には、かつお節、あんこう(肝)、とびうお、たらこなどの魚介類、豚肉(腎臓)、牛肉(腎臓)などの肉類があります。
モリブデン
・モリブデンの役割
肝臓や腎臓に多く存在し、有害物質を分解します。鉄分の働きを助け、造血にも関わります。
・モリブデンの摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のモリブデンの推奨量は18~74歳の男性で30μg、女性で25μgとなっています。
また耐容上限量は、18歳以上の男性で600㎍、女性で500㎍です。
・モリブデンを多く含む食材

モリブデンを多く含む身近な食材には、大豆、いり大豆、きな粉などの豆類があります。
ヨウ素
・ヨウ素の役割
ヨウ素は細胞の新陳代謝や成長促進を担い、甲状腺ホルモンを合成します。
タンパク質の合成や脂質代謝、成長ホルモンにも関係しています。
・ヨウ素の摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日のヨウ素の推奨量は18歳以上の男性で130μg、女性で130μgとなっています。
・ヨウ素を多く含む食材

ヨウ素を多く含む身近な食材として、昆布、ひじき、昆布茶などの藻類があります。
その他にも魚介類などにも含まれます。
和食にはのりやわかめ、昆布などヨウ素が豊富な食材が多く使われているため、日本人はほとんど不足しないといわれています。
全てをバランスよく摂取するのは難しい
ミネラルは全てをバランス良く摂取することが大切ですが、なかなか難しいもの。
そこで足りないものはサプリメントで補うのも手段です。
サプリメントの摂取時の注意点
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、耐容上限量が設定されているものがあります。この量を習慣的に超えると健康障害のリスクが高くなるとされています。
一般的な食生活では耐容上限量を超える心配はあまりありませんが、サプリメントを常用する場合には過剰摂取にも注意が必要です。
またサプリメントと薬と併用すると、効果が弱まったり副作用が強くなったりするケースもあります。事前に医師に相談することが大切です。
ミネラルは相互作用するものもあります。役割や取るべき量を知って、バランスよく摂取することが重要です。