基礎代謝を上げる方法とは?代謝を上げて脂肪を燃焼しやすい体にしよう
2021/10/13
エネルギー代謝について
人間は、生きていくためにエネルギーが欠かせません。そのため、食べ物をとり、3大栄養素である糖質、脂質、タンパク質を消化・吸収して体内でエネルギーを作り出しています。これを「エネルギー代謝」といいます。
体のなかで作り出されたエネルギーは、体を動かすときに使われるだけでなく、心臓を動かす、呼吸をする、体温を維持するといった生命維持活動でも常に消費されています。
1日のエネルギー消費量は「基礎代謝」、「身体活動」、「食事誘発性熱産生」の3つに分類されます。1日のエネルギー消費量の割合は、一般的に基礎代謝が約60%、身体活動が約30%、食事誘発性熱産生が約10%とされ、基礎代謝が一番大きな割合を占めています。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」
「基礎代謝」については次で詳しくご説明しますが、呼吸などの生命維持に必要な最低限の活動によって消費されるエネルギーのことを指します。
「身体活動」とは、安静状態よりも多くのエネルギーを消費する動作すべてのことです。身体活動には2種類あり、ジムでのトレーニングやスポーツなど体力の維持・向上のために計画的・意図的に行う「運動」と、日常での労働や家事、通勤・通学といった「生活活動」に分けられます。
「食事誘発性熱産生」という言葉は聞いたことのない方もいるかもしれません。食事をした後に体が温かくなった経験はないでしょうか? これが食事誘発性熱産生によるものです。食べた物は体のなかで栄養素として分解されますが、このときにエネルギーを使うために熱が発生します。この熱によって、食後に体が温かく感じることがあります。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「食事誘発性熱産生 / DIT」
基礎代謝とは?

私たちは、静かに休息しているときにもエネルギーを消費しています。なぜなら、心臓の拍動や呼吸、体温を一定に保つなどの生命を維持するための活動(生命維持活動)は、安静時にも常に体内で行われているからです。
生命維持活動に必要な最小限のエネルギー量を、「基礎代謝(基礎代謝量)」といいます。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「基礎代謝量」
基礎代謝量は、次に示すように、体格(筋肉と脂肪の比率)、年齢、性別、身体活動レベル、ホルモンなど、さまざまな要素によって変化します。
基礎代謝に影響する要因
体表面積 | 体表面積が広い場合と体表面からの放熱量も多いため、年齢・性別・体重が同じであっても、身長が高い人は基礎代謝が高い。 |
年齢 | 若いほうが成長などによって体内代謝が活発なため、基礎代謝が高い。 |
性別 | 男性のほうが、代謝が活発な組織(筋肉など)の量が多いため、女性よりも基礎代謝が高い。 |
体格 | 脂肪質の人に比べ、筋肉質の人は基礎代謝が高い。 |
体温 | 体温が1℃上がるごとに代謝量は13%増加するとされるため、体温が高い人のほうが基礎代謝は高い。 |
ホルモン | 甲状腺ホルモン・副腎髄質ホルモンの分泌量の多い人は、そうでない人と比べて体内代謝が活発で基礎代謝が高い。 |
季節 | 一般的に、基礎代謝は夏に低く、冬に高くなる。 |
月経 | 女性は女性ホルモンの分泌量の変化が体温に影響を及ぼす。月経開始2~3日前に基礎代謝量が最も高く、月経中に最も低くなる。 |
このように複数の要素が基礎代謝量に影響を与えるため、基礎代謝量は、同じ年齢や性別、身長、体重でも値が異なります。
また、同じ人が測定しても、その時の体の状態や気温などの環境によっても違う値になります。
より正確な基礎代謝量を測定するには、前日の夕食から12~18時間後、空腹時に快適な室温のもとで静かにあおむけになり、目を覚ました状態で行います。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
基礎代謝量を測定できる体重計を持っていない方は、性別、年齢、身長、体重からおおよその基礎代謝量を計算することができます。計算式が複雑なため、下記のように身長などの項目を入力すれば自動で計算してくれるサイトを使って調べるのが便利です。
出典:国立健康・栄養研究所の式を用いた基礎代謝量の推定
出典:厚生労働省「運動の基礎科学」
先ほどご説明したように、静かに休息しているとき(安静時)でも生命を維持するための活動は行われていて、臓器や組織はエネルギーを代謝しています。
どの臓器や組織が安静時のエネルギー代謝量が多いのか、みていきましょう。
全身およびおもな臓器・組織のエネルギー代謝
臓器・組織 | 重量 | エネルギー代謝量 | 比率 | |
---|---|---|---|---|
(kg) | (kcal/kg/日) | (kcal/日) | (%) | |
全身 | 70.0 | 24 | 1700 | 100 |
骨格筋 | 28.0 | 13 | 370 | 22 |
脂肪組織 | 15.0 | 4.5 | 70 | 4 |
肝臓 | 1.8 | 200 | 360 | 21 |
脳 | 1.8 | 240 | 340 | 20 |
心臓 | 0.33 | 440 | 145 | 9 |
腎臓 | 0.31 | 440 | 137 | 8 |
その他 | 23.16 | 12 | 277 | 16 |
体重70kgで、体脂肪率が約20%の男性を想定
(出典:Gallagher,D. et al 1998の表より作成)
上の表をみると、エネルギー代謝量は骨格筋、肝臓、脳の比率が各2割ほどと高く、この3つで全身の6割ほどを占めていることがわかります。
一般的に女性の基礎代謝量が男性よりも少ないのは、男性に比べて女性は骨格筋量が少ないからです。
骨格筋のエネルギー代謝量は、活動量が増える運動時は、安静時に比べて数倍になるといわれています。
1日の1kgあたりのエネルギー代謝量をみると、心臓と腎臓のエネルギー代謝量が440kcalと、ほかの臓器・組織よりも大きいことがわかります。
加齢とともに増える傾向がある脂肪量ですが、脂肪組織は1kgあたりのエネルギー代謝量が4.5kcalと低いため、脂肪が増えても全体のエネルギー代謝量はほとんど増えません。
基礎代謝以外のエネルギー消費についても簡単にご紹介します。
食後の熱産生によるエネルギー消費量(食事誘発性熱産生)は、食事に含まれている糖質、脂質、タンパク質の比率によって異なり、タンパク質は、糖質と脂質に比べてエネルギー消費が多いとされています。
糖質や脂質のみを摂取したときは摂取エネルギーの1割弱、タンパク質のみを摂取したときは約3割が、食事誘発性熱産生として消費されます。
筋肉量が減ると、基礎代謝が低下するのに加えて、食事誘発性熱産生も低下してしまいます。
また、寝ている間のエネルギー消費量(睡眠時代謝量)は、以前は基礎代謝レベルよりやや低いとされていましたが、現在では基礎代謝と同じ程度だと考えられています。
出典:厚生労働省「運動の基礎科学」
基礎代謝はなぜ下がるの? 原因は?
発育の際に大量のエネルギーを必要とするため、成長期や思春期の子どもは基礎代謝量が増加します。そして通常、基礎代謝量は10代をピークに、加齢とともに減少していきます。
その原因は、加齢に伴う「除脂肪組織」量の減少によると考えられています。除脂肪組織とは、言葉の通り「脂肪を除いた組織」のことで、 構成要素は筋肉、骨、内臓臓器、血液です。除脂肪組織量の減少を加味しても、高齢者では成人に比べて5% 程度基礎代謝量が低くなっていますが、その原因はわかっていません。除脂肪組織の減少以外の基礎代謝低下の要因として、各臓器・組織での代謝率が低下していることなどが考えられています。
基礎代謝は、およそ10年で1~3%程度減少し、特に男性での減少率が大きいとされています。ただし、ずっと一定の割合で減少するのではなく、男性では40 歳代、女性では50 歳代に大きく減少する傾向があります。女性の場合は、50歳代に大きく減少するのは、閉経後に除脂肪組織が減少するためだと考えられています。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
基礎代謝を上げる・維持することで得られるメリットは?
基礎代謝を上げ、高い状態で維持することで、1日のエネルギー消費量が増えます。つまり、基礎代謝を上げることで太りにくい体になるといえます。ここでは、食事編と運動編に分けて、基礎代謝を上げる方法をご紹介します。
基礎代謝を上げる方法・食事編
基礎代謝を上げる食事法①水を飲む

基礎代謝を上げるには、水を十分に飲むのがおすすめです。
特に、常温の水や白湯(お湯を冷ましたもの)がよいとされています。常温の水を飲むと、体が温まり、代謝の向上が期待できます。
前述のように、筋肉量が増えると基礎代謝量も増えます。水を飲むことで、血液が筋肉へしっかりと送り込まれて、効率よく筋肉量を増やすのに役立ちます。
それでは、水は1日にどれくらいとればよいのでしょうか?
1日の水の必要量は身体活動レベルによって異なります。身体活動レベルが低い人では1日2.3~2.5L程度、身体活動レベルが高い人で1日3.3~3.5L程度とされています。つまり、あまり動かない人でも500mLのペットボトル5本、よく動く人では7本程度必要ということです。ただしこれには食事から摂取する水分量も含まれています。厚生労働省では「平均的には、コップの水をあと2杯飲めば、一日に必要な水の量を概ね確保できます」と呼びかけています。
基礎代謝を上げる食事法②代謝アップにつながる食材をとる

体が温まる食材やタンパク質の多く含まれる食材を食べると、代謝アップにつながります。さきほどの表でご紹介したように、体温が1℃上がるごとに代謝量は約13%増加することがわかっています。
体を温めてくれる食材には次のようなものがあります。
・根菜類や暖色の野菜
例:ごぼう、たまねぎ、かぼちゃ、にんじんなど
・発酵させた茶葉で淹れるお茶
例:紅茶や中国茶、ほうじ茶など
・薬味や香辛料
例:しょうが、にんにく、とうがらし、シナモンなど
・未精白のもの
例:全粒粉パン、玄米、未精白の砂糖など
基礎代謝を上げる近道は筋肉量を増やすことです。筋肉をつくるための重要な栄養素であるタンパク質が多く含まれた食材を積極的にとるようにしましょう。
良質なタンパク質(タンパク質の含有量が多く、利用率の高いもの)が多く含まれる食材が、卵類・肉類・豆類などです。これらの食材を毎回の食事に取り入れるようにしましょう。
基礎代謝を上げる食事法③よく噛んで食べる
基礎代謝とは異なりますが、食事誘発性熱産生を上げる工夫もしてみましょう。そうすることで、食事後の消費エネルギーを増やすことができます。
食事誘発性熱産生を上げるには、よく噛むように意識します。よく噛まずに飲み込んだ場合や、流動食だけをとる場合に比べると、よく噛んで食べるほうが食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。
基礎代謝を上げる食事法④腸内環境を整える
腸内環境もエネルギー代謝に影響を与えていることが明らかになってきています。
たとえば、肥満と特定の腸内細菌の増減が関連していることが報告されています。肥満で減少していた腸内細菌の仲間は、食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を産生します。こうして産生された短鎖脂肪酸は、交感神経を活性化して代謝を促進したり、細胞への脂肪の取り込みを抑制したりします。また、腸内の細胞からのホルモン産生に影響を及ぼし、糖の代謝を抑えたり、食欲をコントロールして食べ過ぎを防いだりすることも期待できます。
また、肥満では腸内細菌の種類が減少していることが知られていますが、高脂肪食により腸内細菌の種類が減少することも報告されています。
腸内環境を整えるには、乳酸菌や食物繊維を積極的に食べましょう。乳酸菌はヨーグルトや納豆、漬物などに含まれています。乳酸菌のエサとなるオリゴ糖も一緒に摂るとさらによいと考えられています。
基礎代謝を上げる方法・運動編
基礎代謝を上げる運動法①筋トレ

基礎代謝を上げるには、筋肉量を増やすトレーニングがおすすめです。
無理のない範囲で、まずは1日10~15回程度の筋トレを1~3セットから始めましょう。
筋肉が疲労したままの筋トレをするのは避けるようにします。一般的に、筋肉が疲労から回復する期間は筋肉の部位によって2~3日かかるといわれています。そのため、筋トレは2、3日に1回ほどのペースで行いましょう。
筋力アップには、ダンベルやマシンなどの器具を用いて行う方法と、スクワットや腕立て伏せのように自分の体重を利用して行う方法があります。
たとえば、大きな筋肉が集まっている下半身から鍛えてみてはいかがでしょうか。スクワットは、しゃがみ込んで立ち上がる動作を繰り返し行い、太ももの表・裏・お尻など下半身全体を鍛えるため、基礎代謝を上げるのにおすすめの筋トレです。
基礎代謝を上げる運動法②ウォーキング、水泳などの有酸素運動
「有酸素運動」とは、筋肉を動かす際のエネルギー源として酸素が使われる、比較的負荷の軽い運動のことを指します。
一方で、短距離走などの短時間で強い負荷がかかる運動合は、筋肉を動かすエネルギー源に酸素が使われないため、「無酸素性運動」といいます。
有酸素運動には、エアロビクスやエアロバイク、踏み台を使ったステップエクササイズ、水泳やアクアビクス、アクアウォーキング、ジョギング、ウォーキング、サイクリング、ハイキングなどさまざまな種目があります。日常的に続けられそうな運動や、自分の好きな有酸素運動を行ってみましょう。

サッカー、バスケットボールといったスポーツ全般は有酸素運動と無酸素運動が組み合わさっています。
また、有酸素運動と呼ばれる種目も一部は無酸素運動を行っています。たとえば、同じ有酸素運動でも、ウォーキングよりも運動強度が高いジョギングのほうが無酸素運動の割合が高いです。無酸素運動時には疲労の原因物質である乳酸が出るため、無酸素運動の割合は疲労感に比例しています。
また、体脂肪がエネルギー源として使われるようになるのは、運動開始後20分ごろからといわれています。よって、脂肪を減らしたい方は、乳酸が出にくく長時間続けられる有酸素性運動の割合が多い種目を選ぶようにしましょう。週3回、1回最低20分を基本に取り組むのがおすすめです。
ただし、有酸素運動をがんばりすぎて一気に体重が減ると、脂肪量とともに筋肉量も減ってしまいます。筋肉量と一緒に基礎代謝量も低下してしますので、急に過度な運動をすることは避けましょう。
基礎代謝を上げる運動法③ストレッチ

ストレッチも代謝を上げるのに役立ちます。関節の柔軟性を高めるイメージがあるストレッチですが、同時に筋肉量を増やすこともできます。また、怪我の予防やリハビリ、疲労回復にもよいといわれています。
ストレッチには、関節の動きが含まれる「動的ストレッチ」と関節の動きを含まない「静的ストレッチ」があります。
動的ストレッチでは、一定の方向に関節を動かして筋肉を繰り返し伸ばしたり縮めたりします。一方で静的ストレッチでは、一定方向にゆっくりと筋肉を伸ばしたままの状態でしばらく静止します。特に静的ストレッチは動きが少なく、ゆっくり行うために安全そうに思えますが、正しい方法で行わないと筋を傷めてしまうことがあります。我流ではなく、正しい方法を確認しながら、次の5つのポイントを押さえてストレッチをするようにしましょう。
ストレッチのポイント
- 20秒以上かけて伸ばす
- 伸ばす部位を意識する
- 痛いと感じるほどには伸ばさない
- ストレッチ中に呼吸を止めないよう気をつける
- 目的に合った適切な部位を選ぶ
ストレッチと近い運動に、ヨガやピラティスがあります。
ヨガは静止姿勢(ポーズ)を中心に行い、腹式呼吸によって副交感神経を活性化させます。さまざまな流派が存在し、世界的に広く親しまれている「ハタヨガ」は、ポーズ、呼吸法、瞑想を用いて心身を鍛えます。
一方、ピラティスは、胸式呼吸で交感神経を活性化させ、体を動かすエクササイズによって、姿勢の維持やインナーマッスルを鍛えることを目的としています。
代謝を上げる取り組みを始めてみましょう
「脂肪が気になるようになってきた」「体重が増えて戻らない」といった原因のひとつとして考えられる、基礎代謝のことをご説明しました。基礎代謝は年齢を重ねるとともに低下する傾向があります。少しでも体のことが気になる方は、代謝アップにつながる食事を意識してみたり、筋トレや有酸素運動、ストレッチなどの運動をしてみたり、無理のない範囲で代謝を上げる取り組みを生活に取り込んでみてはいかがでしょうか。